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貝料理 館長ブログ141

2021年5月28日
読了時間: 3分

『プロのための貝料理』

 『プロのための貝料理』(柴田書店 2017年)という本を手に入れた。帯に「貝料理と専門店の基本技術」とあり、和・洋・中・ベトナムの貝料理バリエーションが200種紹介されている。貝についての基本知識から始まり、からだの構造や部位の説明など、貝類図鑑と見紛うが、身に含まれる栄養一覧表があるあたりは料理本だ。取り上げられた貝の種類を以下に列記する。イガイ、タイラギ、アコヤガイ、ホタテガイ、ヒオウギ、ナミガイ(白ミルガイ)、ミルクイ(本ミルガイ)、ホッキガイ、バカガイ(アオヤギ)、ハマグリ、アサリ、ウチムラサキ(大アサリ)、ホンビノスガイ、シロガイ、トリガイ、イシガキガイ、オオマテガイ、アゲマキガイ、シジミ、カキ、と以上が二枚貝。

後半は巻貝の部でサザエ、アワビ、トコブシ、ツブガイ、アカニシ、シロバイ、エゾバイ、ツメタガイ、マツバガイ、クマノコガイ、ナガラミ、バテイラ、ヤコウガイと続き、貝以外にカメノテ、フジツボ、それにホヤが紹介されている。ホヤを貝の仲間と思う人もいるらしいが、これは別の動物門。食用に流通する海水産貝類の概要と料理を美しいカラー図版で紹介した、稀有の本といって良い。  最も馴染みの深いのはカキで、フライからグラタン、アヒージョ、中華の炒め物など、見るからに食欲をそそられる。掲載された料理はすべて東京都内にある専門店のメニュー。表題の通り、プロ向けに演出を凝らした内容なので、家庭で再現するにはハードルが高いが、捌き方や下ごしらえなど役に立つ情報も多い。眺めるだけでまずは満足。

アコヤガイ料理は島内レストラン「阿波幸」で

 我がアコヤガイは総説に曰く、貝柱を刺身、天ぷら、酢の物とあるが、作例には貝柱の佃煮しか出てこない。炊き込み御飯、吸物、一夜干し、酢味噌和えなど様々な料理が可能なのに、やはり食材としての認知度は高くないようだ。  アコヤガイの細胞培養研究に業績を残された町井昭先生は中華事物に造詣深く、著書『真珠物語』(裳華房 1995年)に『中国南珠』なる書物からの引用として真珠貝を使った料理を紹介されている。そのひとつ「珍珠鴛鴦丸」はイカとアコヤの貝柱をミンチにして二分し、一方は熱湯で茹でてスープと片栗粉でとろみをつけ、白色で塩味に仕上げる。残る半分は砂糖を加えたパン粉をまぶして油で揚げ、甘味のある黄金色に仕立て、それら色の異なる二種類の肉団子を輝くアコヤガイ貝殻に盛り付け、おしどりの雌雄のように見せるというもの。華やかな宴席向きの料理だ。また「珍珠螺肉粥」は貝肉と豚肉を入れた中華粥で、こちらも旨そうだが、町井家では試されたのだろうか。以前、先生のご自宅でお手製の北京ダックをご馳走になったことがあるので、あるいは自ら厨房に立たれていたかも知れない。  本書で取り上げたこれらの貝は原理的にいえばすべて珠を作ることができるが、当館が標本として持っているのはイガイ、アコヤガイ、ホタテガイ、ハマグリ、ウチムラサキ、ホンビノスガイ、シジミ、カキ、それにアワビとわずかの種類に留まる。タイラギは真珠光沢があり、何とか入手したいところ。不思議なのは同様に美しい内面を持つサザエから真珠が出ないことだ。巻貝だからか。しかし、ピンクガイはご存知のようにコンクパールを抱く。それを思えばヤコウガイやサザエにあっても良さそうなものだが、なぜか出現の報告を聞かない。サザエの外套膜上皮細胞を刺激して真珠袋を作らせることは出来ないものか。  さて、貝類を豊富に漁獲、あるいは養殖する当地方なので、貝を食べさせる店は少なくない。海女小屋の火場で焼き貝、それにパールロード沿いに林立する牡蠣の食べ放題は野趣に富んでいて人気のスポットだ。加えるに、新鮮な素材の持ち味を包丁の冴えで引き出した、目に鮮やかな一皿を創意工夫すれば、当地を訪れる来客に(もちろん地元民にも)とって新しい魅力となるのではないか。先の「珍珠鴛鴦丸」や「珍珠螺肉粥」など如何。

(2021年5月28日)

 
 
 

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