top of page
館長のブログ
真珠博物館長・松月清郎による読み応えたっぷりのコラム。真珠はもちろん、文学、伊勢志摩の文化、歴史、民俗など、得意分野は多岐にわたります。
検索


「賽銭のお釣りをもらった話」館長のブログ192
新年おめでとうございます 初詣にお出かけになりましたか。今回はお賽銭に関する御木本幸吉のエピソードを。 「幼時から敬虔の念の篤かった幸吉は、宇治や山田を通る時は必ず神宮に参拝し、参拝すれば必ず玉垣の石垣の下にひざまずき、賽銭を差し上げ、柏手を打って恭しく礼拝する。賽銭は始め頃は文久通貨一枚、寛永通貨一枚、いずれも今日は見られない厘銭であるが、身分のようやく高上するにつれて、一銭銅貨一枚となり、二銭銅貨一枚となり、決して違わなかった。ある日参拝して御門前にひざまずき、懐中の財布から手探りで二銭銅貨を差し上げるつもりで、五十銭銀貨を上げてしまった。身分不相応だと考えると、さあどうしても気が済まないので、神宮衛士の方へ申し出た。大勢の参拝者の沢山の賽銭のことゆえ、調べられないといって断られたが、幸吉は貧乏で二銭の賽銭を奉納する身分であって、まだ断じて五十銭をさしあげる身分でないから、どうかお手数でもお調べを願いたいというので、衛士も幸吉の真摯な態度にうたれてその要請を容れ、ついに四十八銭のお釣りを頂いたのである」(乙竹岩造『伝記御木本幸吉』雄弁会講
1 日前読了時間: 4分


「真珠貝グッズコレクション」館長のブログ191
観光地土産の変化が著しい。大雑把な印象でいうと食品が陳列の大半を占めて、工芸品の類が少なくなった。伊勢志摩では海女さんの人形とか貝殻で作った帆船など、昔の定番だった品はまったく見かけない。旅行者の嗜好の変化や生産者側の事情があってのことだろうが、懐かしい土産はすでに淘汰してしまったのだろう。 アコヤガイに関連する土産品も同様に絶滅の一途をたどっている。真珠の方は変わらぬ人気なのに、その生みの親の方に関心を向ける人が少ないのは淋しい。貝殻内面の真珠層は美しく、かたちも個性的で、その昔は貝殻そのものを利用、あるいはかたどった品が色々と店先を飾っていたのだが。 思いつくままに挙げると、まずアコヤガイ型の灰皿があった。今ではもう灰皿そのものが公共の場から姿を消しているが、かつては応接室のテーブルの上になくてはならないアイテムだった。アコヤガイの特徴である蝶番左右の形状を忠実に再現、貝殻のハサキにあたる周囲を波打たせて、たばこを置く造形が施されている。真珠に見立てた丸い突起はたばこの先の火を落として消すための工夫か。内面に虹色の真珠光沢を持たせ、周囲に
2025年12月4日読了時間: 5分


「働く女性たち」館長のブログ190
真珠業界で働く女性を取り上げた小説をご紹介しよう。夜長のこの頃、図書館で探してみてはいかがだろうか。まずちょっと古いところから昭和39年から41年まで雑誌「女学生の友」に連載された平岩弓枝の『若い真珠』を。 ヒロインは比較的恵まれた家庭環境で明るく屈託がなく育ってきた。一方、対するアンチヒロインは複雑な生い立ちで、性格にややかげりがある。逆境に負けないガッツはあるが、ヒロインの恵まれた境遇にコンプレックスと反感を抱いている。彼女たちの交遊を巡って互いの行き違いが引き起こした事件は周囲を巻き込み、クライマックスが導かれるが、最後に二人は理解しあい、大団円で終わる。 これはジュニア小説の約束事で、若い読者は登場人物それぞれに自分自身を重ねながら読み進めるうちに、社会のルールや友情の涵養、道徳規範などを学ぶことができた。反感も共感も予定調和する安心感は独特の味わいで、ファンも多かったことだろう。 ヒロイン奈知子は14歳の中学生。アンチヒロインの久美は同じ年代に設定されているが、学校に行っている様子はない。これから実社会に出てゆく読者のために、いく
2025年10月29日読了時間: 5分


「レプリカとフェイク」館長のブログ189
真珠博物館が開館してこの9月で40年を迎えた。特に文化史分野は収蔵品が少ない状態でスタートしたため、ジュエリー資料の入手は急務だった。ディーラーへの接近やオークションの参加、伝手をたどって所蔵者に譲渡を依頼したり、当時の御木本美隆会長に雑誌誌面で協力を呼びかけていただいたり...
2025年9月17日読了時間: 4分


「アワビの真珠」館長のブログ188
夏の鳥羽志摩の味覚といえば、第一番はアワビだろうか。9月15日から禁漁期に入るので、そろそろシーズンも終わりにさしかかる。ずいぶん昔の夏の話、広報誌の取材で鳥羽市内の相差の浜を訪ね、海女さんと一緒の船に乗ってアワビ漁に同行したことがあった。前回のゴードン・スミスではないが、...
2025年8月17日読了時間: 5分


「答志島を訪れた最初の英国人」館長のブログ187
インバウンドの来客が2000万人を超え(6月末現在)、真珠島の場内も時間帯によれば日本人の客数の方が少ないこともある昨今。その先駆けは明治時代にあった。アーネスト・サトウ、チェンバレン、イサベラ・バードらの著した紀行文によって日本に対する興味が西洋で高まり、旅行ブームが興っ...
2025年7月19日読了時間: 4分
bottom of page