「真珠貝グッズコレクション」館長のブログ191
- Blue East
- 19 時間前
- 読了時間: 5分
観光地土産の変化が著しい。大雑把な印象でいうと食品が陳列の大半を占めて、工芸品の類が少なくなった。伊勢志摩では海女さんの人形とか貝殻で作った帆船など、昔の定番だった品はまったく見かけない。旅行者の嗜好の変化や生産者側の事情があってのことだろうが、懐かしい土産はすでに淘汰してしまったのだろう。
アコヤガイに関連する土産品も同様に絶滅の一途をたどっている。真珠の方は変わらぬ人気なのに、その生みの親の方に関心を向ける人が少ないのは淋しい。貝殻内面の真珠層は美しく、かたちも個性的で、その昔は貝殻そのものを利用、あるいはかたどった品が色々と店先を飾っていたのだが。
思いつくままに挙げると、まずアコヤガイ型の灰皿があった。今ではもう灰皿そのものが公共の場から姿を消しているが、かつては応接室のテーブルの上になくてはならないアイテムだった。アコヤガイの特徴である蝶番左右の形状を忠実に再現、貝殻のハサキにあたる周囲を波打たせて、たばこを置く造形が施されている。真珠に見立てた丸い突起はたばこの先の火を落として消すための工夫か。内面に虹色の真珠光沢を持たせ、周囲に金線の縁取りがある。装飾品としても上出来だった。石鹸皿や小物入れとして生き延びている個体があるだろうか。
アコヤガイの小さい貝殻を透明樹脂に封入したキーホルダーは手軽なお土産として人気があった。孵化して数か月の稚貝の貝殻に小粒真珠をあしらったもので、無駄な装飾がなく、貝殻標本としても楽しめた。
道の駅のご当地キーホルダー売り場でアコヤガイを発見。こちらは全体が樹脂の造形で、東海限定の「ご当地解剖図鑑No42」として売られていた。貝殻の一面をカット、生殖巣、貝柱、真珠がそれぞれ示されている。パッケージの裏には貝の内蔵各器官の説明があり、教育的に配慮した商品といえるが、真珠に輝きがないのが惜しい。
アコヤガイの貝殻を成長過程に小から大、そして大から小へと並べ、周囲を小さなイガイと銀色のモールで飾った「標本額」も今は見かけない。これを壁に飾れば、お部屋はたちまち昭和にワープだ。さらにその前の時代には、アコヤガイの解剖模型を額にしたものまであった。こちらは科学教材で自宅に飾るものではなかったと思われる。小学校の理科室用だったのか。昭和30年代には真珠養殖を学校で教えていたのだろうか。
標本といえば、アコヤガイそのものをガラス瓶に封入した置物があった。スノウドームのような瓶の中に貝殻を開けた貝が軟体部を曝け出した状態で置かれている。時代を経て中のアルコールは半分ほどに減ってしまった。真珠やアコヤガイに対する科学的関心が家庭にまで浸透していた昭和の良き時代を物語る遺物といえる。アコヤガイを封入した缶詰もあり、こちらは外国人向けに企画されたようで、表記は英語。食べ物ではないと注意書きがある。
柄の部分にアコヤガイの飾りを配したスプーンはいくつかバリエーションがあり、市販されたものとノベルティがあった。貝の中央には小粒の真珠がはめ込まれて、手に取ってみればしみじみと愛らしい。台所の引き出しで燻っているのがあれば金属磨きで美しくしてやって欲しい。
アコヤガイの形状をかたどった銅板製のピルケース。表にPEARLと文字が刻まれている。販売されていたのかどうか不明。蝶番があって貝殻のように開けることができ、ばね仕掛けで丸薬が一粒ずつ出る仕掛けが内蔵されている。元の持ち主は「仁丹入れ」といっていた。
スワロフスキーの真珠貝型の置物は先代館長から頂いたもの。半ば開いた貝殻の中に真珠が覗く。貝殻は厚めのクリスタルで表面にファセット(切子面)が刻まれている。見る角度によってさまざまな色の光に変化し、見飽きない。朝の日光の下に置くといっそうその輝きが増す。
同じように開いた貝の中に、ピンクの小さい豚が入っているガラス細工の小物。その豚の胴回りを白い粒が取り巻いているので「豚に真珠」だとわかる。
貝殻の中に真珠を置いたバスソルトはスタッフのひとりが見つけてきたもの。貝殻をデフォルメした形状が愛らしく、使うのが惜しい。こういうものを企画し、実際に商品化するような仕事は楽しいだろうな。
以下は私作品。
アコヤガイの貝殻の輝きを生かした足元灯を作ってみた。ホールソーで貝殻を丸く刳り貫いて、市販のフットランプ用パーツを取り付けたもの。博物館2階ロビーで白いLEDが真珠層を美しく照らし出す。
アコヤガイのパペットは手作りのぬいぐるみ。同じく2階レファレンスの絵本コーナーが住処。来館の子供たちが口をパクパクさせて遊んでいる。現在3代目が活躍中。
最後に真珠貝をデザインしたチョコレートのパッケージをご紹介。外国のお土産にいただいたもので、おもてに真珠を抱いた貝の画と「The World is Your Oyster」の文字が金色の箔押しで大きく描かれている。この語の出典はシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』で、「貝のごとくに閉ざしたる、世間の口をこじ開けて真珠を頂戴するのみだ」という訳(小田島雄志)が与えられているが、慣用句としては「世界はあなたのもの」として理解されている。
真珠貝の楽しいグッズを身近にもっと。
2025年12月4日
松月清郎
写真
① アコヤガイ型の灰皿
② キーホルダー アクリル
③ キーホルダー 「解剖図鑑」
④ 標本額
⑤ スノウドーム型標本瓶
⑥ アコヤガイの缶詰
⑦ スプーンとピルケース
⑧ スワロフスキーの真珠貝
⑨ 「豚に真珠」
⑩ バスソルト
⑪ フットランプ
⑫ パペット
⑬ チョコレートのパッケージ「The World is Your Oyster」
















コメント