「真珠コレクションの展示」館長のブログ197
- 2 日前
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真珠コレクションというと、真珠を用いたジュエリーのコレクションと思われがちだ。今回の展示でご紹介するのはそれではなくて、貝や鉱物と同様、真珠そのものの珍しさや面白さを楽しんで頂くためのコレクション。店頭に並ぶ装身具としては見かけない類の真珠を揃えた。
貝の中から現れた珠を手にして眺める。そのこと自体でも軽い驚きであるが、それが丸く整った珠であれば、人は何となく良いことがあるような気分にさせられる。ましてそれが大きく、輝きを持っていればその嬉しさは如何ばかりだろう。それを瑞兆として、身に付け、お守りにする。装身具はそうした不思議の力をわが物にすることから始まったというのが、大方の一致した見方だ。
鉱物や貝などのコレクションは理科系博物館の常設や企画展で見ることができるし、個人でも相当な品を所蔵するコレクターがいる。真珠の収集家もいるにちがいないが、なぜか、あまり表にでてこない。フィクションではあるがジュール・ヴェルヌの小説『海底二万マイル』にはネモ艇長の真珠コレクションが次のように紹介されている「紅海のタイラギからとったバラ色の真珠、紅色あわびの緑色の真珠、そのほか黄色い真珠や黒い真珠さまざまな軟体動物や北海のイガイからとれためずらしいもの、もっとも珍しい真珠貝からとった大変高価ないくつもの標本など、なかにはハトの卵より大きいのがあった」(江口清訳)。以下、詳しくは原典にあたるか、拙書『図書室で真珠採り』をご参照下さい。
ハトの卵は長径が4センチで短径が3センチほどだから、当館が所有する直径4センチのシロチョウガイ真珠「ビッグパール」はネモ艇長のコレクションの品に匹敵する。大きいものは他に11.8mmのアコヤガイ真珠、16mmのシロチョウガイ真珠、19mmのクロチョウガイ真珠がある。これらはいずれも養殖で、大きさだけでなく輝きや色調など真珠としての美しさを兼ね備えた一品といえよう。異形のアワビ真珠とアメリカの淡水二枚貝から出た天然真珠はどちらも美しい輝きを持つ唯一無二というべき品。独自のオレンジ色で真珠の仲間に加えられているナガイトマキボラという巻貝から出た天然真珠も21mmで迫力十分。同じく大型の巻貝トウカムリから出た17mmの珠と並べて展示した。
人が真珠に出会う偶然の機会は食事中であることが多い。今回はアワビ、カキ、シャコガイにハマグリ、アサリ、ホタテ、アカガイ、タイラギなどから出た珠をそれぞれの貝殻とともに展示してみた。真珠は貝殻の内面と同一であることがおわかりいただけると思う。ここでは炭酸カルシウム結晶の層状構造(真珠層構造)から成り、光沢を有するものを真珠といい、そうでないものを珠と呼んで区別している。
アサリなどは貝そのものが小さく、体内に形成される珠も小さいので、気付かないことも多いだろう。ホタテガイのヒモ(外套膜)の中には小さい珠が入っている可能性があるので、確かめてみると良い。アコヤガイの真珠を探そうと思えば、冬の浜揚げシーズンに地元のスーパーや魚屋に並ぶ貝柱を狙うのがお勧め。貝柱の近くには小さな真珠が形成されることがある。アコヤガイの貝柱のぬめりを取るのに水洗いする時は桶の底に注意しよう。真珠が光っているかもしれない。ただし大方は1ミリにも満たない大きさだが。
今回の展示ではいろいろな形状の仏像真珠を並べてみた。中国の湖沼に生息する貝殻内面に輝きのある二枚貝を使い、貝殻と外套膜の間に仏像などの形をした金属を挿入して、その上に真珠層を形成させたもので、12世紀初期の文献(『文昌雑録』)に製法が記載されている。挿入するものの形がそのまま輝きを持つので見た目に面白く、お土産として近年まで売られていたようだ。1970年代の文化大革命の指導者毛沢東の横画を浮かび上がらせた貝殻があるので、その当時までは作られていたことがわかるが、現在ではどうだろうか。
他には昭和初期に養殖場の真珠を集めて作った標本箱、同じ頃に養殖試験を続けていた御木本真珠養殖場の技師が残した標本瓶を初めて展示公開する。
真珠にはジュエリーとして身を飾る前に、そのものを鑑賞するという楽しみがあることをしみじみと実感できるだろう。国内で真珠標本のコレクションを見ることのできる博物館は他にはないと思う。どうぞお立ちより下さい。
2026年8月4日
松月清郎
写真①ギネス認定 世界最大の養殖真珠
写真②怪しい輝きのアワビ真珠
写真③無数の真珠を抱えたアコヤガイ
写真④鮮やかなオレンジ色の真珠
写真⑤仏像真珠の数々





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