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「鳥羽の朝ごはん」館長のブログ174

 御木本幸吉は健康の秘訣を「朝三、昼二、夜一」と説いている。いうまでもなく一日の食事の割合のことで、朝食は一日の活力を補充するために多くとるのが良く、夜は少なくして胃を休めるべきだ、というもの。なにしろ九十六歳まで長寿を保った人の言葉なので、ごもっともと受け取るしかない。

 裏返せば、色々な事情で朝食を充分にとれないという人は多いのだろう。食事は大事だが、朝は忙しく、つい簡単なもので済ませてしまう、ということになる。

 そこで提案。ご近所で集まって朝ごはん、という場をつくってはどうか。

 めしを炊く、味噌汁を作る、干物を炙る、卵を焼く、海苔を火取る、野菜を茹でる等々、何人かが集まって各自の出来る仕事を分担しあい、整えて食卓に着く。しばし和気藹々、話も弾む。しかるのちに片付けに取りかかり、終了、という手順だ。

 味噌汁は季節で具も変わり、味噌だって赤味噌、米味噌、合わせ味噌、手前味噌、色々の味が楽しめる。

 この朝食会を鳥羽の中心市街地で考えてみよう。どこの町内でも空き家が増えているから、その対策とすれば場所には困らない。できれば土間のある台所で、さすがに竈の残っている家はないだろうが、この際、釜を使って直火でごはんを炊く事にする。そうすると香ばしいおこげができますね。これだけで充分にご馳走といえる。

 鳥羽は近郊に農家が多く、新鮮な野菜や果物に恵まれているから、季節ごとの食材はより取り見取り。海産物はいうまでもない。

 さて、ある日の朝ごはんの献立は次のようなものだ。

 各種海藻のサラダ 釜揚げシラス 磯魚の煮付け アラメ巻き(イワシをアラメで巻いて煮たもの)イワシ酢漬け 干物各種 海苔(地元産を火取って) 玉子焼き 佃煮各種 浅蜊貝の赤だし めし(おこげ混じり) 漬物各種 デザートに季節の果物

 こういう品々を並べて各自が好きなだけ皿に取る。毎日は大変だから、週末に開催することにすれば良い。材料は持ち寄るか、費用を頂くか、いずれにしても少ない負担にしておく。

 世界一の朝食というつもりはないが、これはご馳走だ。実際は具沢山の味噌汁だけでも充分のところ、ちょっと奮発してみた。商品としては価値の低いベラやムツなどの磯魚も煮付けや唐揚げにするとなかなか旨い。アラメ巻きは鳥羽の離島地域の郷土食。火取った海苔の磯の香り。とにかく産地を丸抱えしているので、素材に困ることはない。これを大勢で作って食べれば美味しさは倍増する。子供たちも一緒に楽しみたい。

 そうして地元民だけで始めた鳥羽の朝食会がいつしかメディアの知る所となり、報道される。この朝ごはんを食べるのには前日から鳥羽に入らなければいけないから、素泊まりの宿にチャンスが生まれる。外国人には異文化を知る良い機会として話題になる。旅館の厨房経験のある方に腕を振るってもらうのも良い。利益を生む設定ではないからボランティアと割り切っていただこう。

 ということで、空き家対策、高齢者の社会参加、地域コミュニティーの活性化、地産地消、観光資源、それに幸吉翁の言葉の継承と、利点の多い事業となるはずだ。

 鳥羽の皆さん、いかがでしょうか。

2024年3月1日

松月清郎

『知恵がいっぱい、幸吉カルタ』(当社刊)より「あ」と「う」


幸吉翁の食事風景

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