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「児童書で真珠採り」館長のブログ172

 12月1日に二冊目の著書『図書室で真珠採り』(月兎舎)を上梓した。前回の『真珠の博物誌』と違って、地方の自費出版で部数も少なく、配架してもらえる書店や図書館も僅かだと思うが、ご縁があって見かけることがあれば、どうぞ手に取ってやって欲しい。

 お読み頂いた方から温かいメッセージが数々届いた。ある女性は本書の構成を面白く思われて、ご自分の子供達に「真珠と名の付く本がないか」探索をもちかけた。母親の求めに応えて子供達は何を探し出したか。その成果の報告とともに現物が送られてきた。「自宅で真珠採り」とご本人のコメントが付けられている。いい家庭だな。これだけ遊んで貰えれば冥利に尽きるというものだ。

 頂いたのはポケモンのキャラクター「パールル」と、同じく任天堂のゲームで「ピクミンのいる庭」から「ヤマシンジュ」。「パールル」は前に金沢で開かれたポケモンを主題とした工芸展を見た時に仲間を一通り学習して名前は知っていたが、「ヤマシンジュ」は初耳。自分の体内で形成した真珠で獲物を捕食する、こちらも「パールル」同様、二枚貝のキャラクターだ。

 続いて『名探偵コナン』の16巻。ここにはfile6「邂逅」から9「終極」で怪盗キッドが初登場、幸運を呼ぶ黒真珠を狙う話が収録されている。さる財閥が所蔵する世界最大の黒真珠「漆黒の星(ブラックスター)」の盗みを予告する怪盗キッド。それを阻止する名探偵という古典的な設定だが、怪盗の眼を欺こうとする財閥側の仕掛けが面白い。

 もう一冊が『チリとチリリ』という絵本。自転車に乗ったふたりの女の子がいろんなところを走りまわるシリーズで、彼女たちの名前のチリとチリリはベルの音か。「うみのおはなし」という副題がついた本作は、ふたりが海の底で巻貝と真珠を見つけ、それを装身具にする話。知らなかった。

 実はこれまでに児童書も何冊か収蔵している。まず翻訳物から『王女さまのお手紙つき』というシリーズの一冊で『南の島の願いごとパール』。おとぎの世界のさびしそうな王女様が勇気ある友達と知り合って結成したティアラ会。その会員の王女様たちが活躍する冒険譚で、宝石と装身具が小道具として使われる。この巻ではイルカの赤ちゃんを救う場面で真珠が不思議な力を発揮。真珠の本質的な役割と働きを踏まえた展開だ。

 次もシリーズでスティーヴ・スティーヴンソンという作家の『少女探偵アガサ』。名前は推理作家へのオマージュか。第2巻インド編では寺院から盗まれた秘宝「ベンガルの真珠」の行方を追ってアガサがロンドンから海外へ。ヒッチコック『裏窓』が引用されたり、水陸両用のボンバルディアCL415を登場させたり、と児童書らしからぬマニアックさで楽しめる。

 次の三作は日本の作家から。『せかいいちの名探偵』第1話「タイとしんじゅ事件」は町場で起こった事件。盗まれた真珠の隠し場所から名探偵ミルキー杉山が犯人を探し出す話だが、判明後に後日譚で救われる結末は読者への配慮か。

 『王さま 魔女のひみつ』で王さまが魔女から渡されたのは人魚のくし。そのくしで髪をとかすと真珠が飛びだす。この王さまは会議に遅刻すれば逆立ちをさせられ、真珠を盗んだ疑いで牢屋に入れられる、という情けない立場。王様と道化は表裏一体なのだな。

 最後にマンガを一冊。佐々木マキ『怪盗スパンコール』を紹介する。絵本作家、イラストレーターとして多くの作品を発表している佐々木マキが70年代初頭、『ガロ』で前衛マンガを発表していたことを記憶する人も少なくなったのではないか。本書に収められた「まぼろしの豚に真珠」は豚のかたちをしたガラスの容器に入った真珠を怪盗スパンコールが奪う話。単純なストーリーだがアメリカンコミック風の絵が楽しい。

 精神の真っ白な年代のうちに印象付けられた真珠の意味や美しさ、希少性などの特性は記憶のなかで生き続けるだろう。これらの本に接した子供たちはきっと真珠に対する関心を持ち続けてくれるに違いない。


2023年12月25日

松月清郎



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