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「オズ」館長のブログ175

 先日、Zoomでトークをした際、ある方からアーサー・ランサムにも真珠の出てくる話がありますよ、と教えていただいた。この方面は明るくないな。アーサー・ランサムがイギリスの児童文学者ということは承知していたが、実は一冊も読んだことがない。


写真①

 聞き取ったツバメとかヤマネコという単語を頼りに岩波少年文庫の『ツバメ号とアマゾン号』上下2巻を入手、ページを繰る。ウォーカー家の四人兄弟が無人島で過ごす冒険譚で、中ほど、子供たちが水に潜って湖底から真珠を取り上げる場面があった。だがよく読むと、彼らは真珠貝を拾い上げて真珠を取り出すのではなく、真珠のような白い石を拾ってくるのだった。水中では真珠に見える艶やかな丸い玉も、陸に揚げれば乾燥して白っぽい石でしかない。子供たちは真珠採りごっこに興じていたというわけだ。




写真②

 ファンタジーに不案内だが、ライマン・F・ボームの『オズ』シリーズには真珠が登場する。第1作『オズの魔法使い』が大ヒット、シリーズは14作まで続いた。そのうちの11作『オズのリンキティンク』では真珠が重要な役割を担っている。第1作でドロシーが家もろとも竜巻で飛ばされたのはオズ王国の中のマンチキンという国だった。複数の国からなるオズ王国は外周に沙漠地帯があり、今回、舞台となるのはその外側でノネスティック海に面したリンキティンク国に設定されている。

 そのノネスティック海にピンガリーという小島がある。領主のキチカット王が統治する島の主要産業は天然真珠の採取で、周囲の海岸のどこでも世界一の美しいミルク色の真珠が採れる。島民は穏やかな性質で、漁民が採取した真珠は王のもとに集められ、年に一度、リンキティンク国にもたらされる。ピンガリー島から四日をかけて、真珠は六隻の船で運ばれる。リンキティンクにはギルガッドという都があり、ここで降ろされた真珠は王宮に運ばれ、王が買い上げる。そしてピンガリーの人びとはその代価で島民の生活に必要な一年分の商品や食料を買い、島に戻る。これが平和な島の生活である。

 このピンガリー島から船旅六日の北方にはレゴス島とコレゴス島という二つの島がある。これらの島の住民は凶暴な性質で、過去にピンガリー島を侵略したことがあった。キチカット王は王子の頃に経験した襲来を記憶しているが、その時、ふだん穏やかなピンガリーの人々は勇敢に戦い、大嵐を受けて侵略者は背走した。

 だが、王は再び侵略があるのではという恐れを抱き、後継者となるインガ王子を呼んで防御の秘密の力を伝える。それは王宮の広間に秘匿された三つの真珠だった。

 いずれもビー玉ほどの大きさで、ひとつはうっすらとした青、ひとつはほんのりとしたバラ色、そして残るひとつは純白の真珠だ。これらはその昔、人魚の女王から王の先祖のひとりに贈られたもので、青い真珠は強さを、バラ色の真珠は危難を避ける力を持主に与える。そして純白の真珠は口をきくことができて、つねに賢明な助言を与えてくれるという。先の侵略の際に吹いた大嵐はこの真珠の不思議な力によるものだった、とキチカット王は信じていた。

 これらの効力は主権者が真珠を身につけていないと発揮されない。それなら常時携帯していれば良さそうなものだが、キチカット王はうっかり失くすのではないかと心配で、こうして王宮の地下に隠している。それでは必要になった時、取り出すのに間に合わないのではというインガ王子の懸念はやがて現実になるのだった。

 と、ここまでが導入の設定である。このあと、恐れていたとおり北方民族が襲来し、ピンガリー島は攻撃を受けて、キチカット王をはじめとして住民は連行されてしまう。木の上に隠れていて難を逃れたインガ王子は、たまたまこの島を訪れていたリンキティンク国の王様、それに口をきくヤギと共に、拉致された人びとを救出に北の島に向かう。身につけた不思議な真珠たちに何度か危機を救われ、所期の目的を達成することで王子が成長する楽しいファンタジーだ。

 原題はLINKITINK IN OZ(1916年)なのでその通りなのだが、内容からするとこのタイトルで良いのかどうか、疑問が残る。表紙の絵はホタテガイかアカガイのような貝殻に三つの珠が乗っていて、三色団子を連想した。真珠が重要な役割を果たしているので、その点を訴求すれば良かったかも。

 『オズの真珠採り』とか。


写真③

松月清郎  2024年3月30日



写真① アーサー・ランサム 神宮輝夫訳『ツバメ号とアマゾン号』岩波少年文庫

写真② ライマン・フランク・ボーム 佐藤高子訳『オズのリンキティンク』ハヤカワ文庫

写真③ 真珠の色の秘密は新しくなった博物館一階展示で

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